リリーこども&スポーツ専門学校

子どもたちの未来をひらく
スポーツ保育士の価値
スポーツトレーナーとしての教育理論
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幼児教育における科学的理論

数々のトップアスリートを育てたテニス指導者
小浦 猛志先生
学校法人リリー文化学園 理事長
大久保 博之
大久保 博之

「教育とは愛である。教育とはアイデアである。」をモットーに、専門学校、幼稚園、保育園、スポーツクラブ、各種教室等の経営に手腕を振るう。

学力偏重に一石を投じるユニークな教育方針を打ち立て、日本の未来を担う子どもを育むべくリーダー教育を実践している。

小浦 猛志先生

テニス界において伊達公子選手や沢松順子・和子選手など数々のトップアスリートを育てた小浦猛志先生。フェドカップ代表監督(1997~2000、2003~2004)として日本女子テニス国別対抗チームを率いる。

元日本テニス協会常務理事兼同協会強化本部長を務める。

2017年11月旭日双光賞受賞。

リリー&こどもスポーツ専門学校で養成するスポーツ保育士の意義について、テニス界のトップアスリートを育成してきた小浦猛志先生のスポーツトレーナーとしての教育理論と、大久保理事長の幼児教育における科学的理論の両面か対談しました。

ゴールデンエイジで身体機能をしっかり育むことが、子どものポテンシャルを大きく伸ばす

小浦先生

スポーツでいうと、0~1歳は、一生使う身体の機能が確立される時期。2~3歳は、人との関わりや社会・生活の中で五感が発達する時期。その後に、“五感を使って五体を揺さぶる”、いわゆるゼネラルコーディネーションといわれる、身体をうまく動かすための機能性・基礎的な運動能力が培われる。その先に野球やテニスといった個性が出てくるんです。

ところが、例えばテニスだけを教えたら、上手くはなるが、14、5歳で伸び悩みが出てくる。その原因は何かというと、ほとんどのケースは基礎的な機能性が欠けているんです。

大久保

私たちの幼児教育も、ほとんど同じです。脳の一番奥の古い脳、いわゆる小脳など、身体を司る部分をしっかり育むことが大切なんです。いきなり英語のビデオを見せたりしても本末転倒。しっかり身体を鍛え、古い脳を鍛えた後に、人間的な知能を育てないと。

0~乳児期は身体や体幹をしっかりつくって、5~9歳で多くの体験活動を通して脳の器を大きくする。10歳以降は少しずつ自分の個性にあったものに特化していく。だから、小さい頃にハイハイとか、リリーでは全身を使う“トカゲ歩き”をさせるんですが、そうした身体づくり、その時期に育むべき能力が発達しないうちに次のステージに行ってしまうのは良くないわけです。

小浦先生

そうですね。五体を上手く動かせるだけの神経回路の構築はやっぱり必要だと思うんです。乳児期に四足歩行している間は動物と同じで身体全体が動く。ところが2足歩行になると、退化する部分が出てくる。これがスポーツでいえば脊柱筋や腸肋筋などが退化していってしまう。これは身体を支えたり、ひねったりする時に使う筋肉で、正常に左右にひねれなくなるんですよ。

子どもにテニスのフォアハンド、バックハンドを教えると、絶対に左右好きな方で打ってしまう。例えば左が主体になってしまうと、そちら側が太くなってしまって、15、6歳になったら使っていない反対側の改革ができなくなっている。13、4歳で成績が良くても、身体の機能性が悪いと、上にいけばいく程、大きな差として現れるわけで、そのままいったら15、6歳で終わり。

それが、ゴールデンエイジ期、その6歳くらいまでに、身体を動かす基本的な部分をしっかりやっておくと、かなり変わると思うんです。

ゴールデンエイジ期について
大久保

そこは就学前、つまり保育士の出番ですね、まさしく。

小浦先生

スポーツトレーナーが子どもを預かるよりも前の時期ですから、これは間違いなく保育士だなと。保育の現場を見せてもらった時にもいったように、いくらでもやるチャンスはあるなって思います。

大久保

現代社会で人より優位に立とう、いわゆる大企業に勤める、東大に入るとなると、どうしてもIQ系の理論数学的知能と言語的知能に特化することが求められてしまう。でも、そういう人たちでも、その中からさらに一歩抜けだそうとすると、やっぱり芸術的感性と体力がないとダメ。そういう基礎というのは、少年期くらいまでの多様な体験で、運動的知能、絵画的知能、空間的知能といったものをしっかり身につけておく必要がある。それは座学ではできないので。

小浦先生

9歳までのゴールデンエイジ1期・2期で、ゼネラルコーディネーションという、人間の身体を動かす機能に力を入れるべきなんです。日本では、身体機能を高めようというと、他のスポーツもやれとなる。サッカーをやったり、野球や水泳をやって、それからテニスをやれと。そうじゃないんですよ。もっともっとスポーツ生理学の部分の、肩甲骨の可動域とか、骨盤の使い方とか、いろいろなところを子どもの頃に落とし込むゼネラルコーディネーションが大切なんです。その後に、スペシャルコーディネーションという、テニスとか野球とか、特化したスポーツに入っていく。こういうことを、日本ではきちっと区別して教えていないんです。海外では、全部区別してやっていますよね。

大久保

やっぱり日本では根性論とかが先にきちゃって。

小浦先生

一番大切なところをおいといて、いきなりスペシャルコーディネーションのところだけパッと、運動力学などのバイオメカニクスでやる。ところがバイオメカニクスは、絶対にスポーツ生理学があってのバイオメカニクスなわけです。

だけど、これを「スポーツ保育士」がいて、ゼネラルコーディネーションに力を入れておけば、我々スポーツトレーナーがする手直しは、ものすごく少なくなるはずなんです。リリーは、人が成長する過程における、ものすごい経済的な部分を研究されている、実現されているのかなという気がします。

スポーツをする上で大切なのは、ゴールデンエイジ1期・2期の9歳までは、一つの競技だけに特化せず、人間の身体を動かす機能の強化に力を入れた方がよい。学力もスポーツ能力も9歳に分岐点があるのではないでしょうか。

現代の子どもたちの特徴とスポーツ教育の課題とは

小浦先生

例えば1964年(東京オリンピックの頃)の100mは10秒台。いまもそんなに変わらない訳ですよ。その頃は道具は粗末で靴もいい加減な靴を履いてて、インナーソールなんて売ってなかった。だけど、それで4時間、5時間練習しても支障がなかったんです。でも今の子は激しい動きで腰を痛めたとなると、必ずインナーソールが悪いとか、道具を使う。もちろん道具も大事だけど、例えば大谷翔平とかは、あまりにも足の機能性が高くて、一般の靴じゃ履けないから自分に合った靴を作るわけでしょ。でも、一般の選手は道具をサプリメントみたいに身体機能の補助として使おうとする。

これは、やっぱり僕らみたいに自然の中で遊んで育った人間と、今のアスファルトの上で育ってきた人間との差が出ているんじゃないかと。例えば錦織圭なんかは、島根のド田舎で育って、案外野性的な生活をしてきてるわけです。でも、そういう話はほとんどでてこない。なんでこいつは飛び抜けてきたのかっていうと、こんな環境でこんなことをやっていた、という話が大事なのに。

大久保理事長がいわれた教育も9歳までに、というのは学術的にもわかっていることですよね。でも、文科省や日本のスポーツ教育は、発達発育過程やコーディネーションのあれこれが全部わかっているのに、やっていない。私が今感じている一番の不満というか。

大久保

やっぱり指導する先生方の中で、自分の得意フィールドが命、という人がいっぱいいますからね。小さいうちに運動をやらせた方が、かえって頭がよくなりますよ。データ的には先取りの教育をしても、そんなに差はでない。それよりも、むしろ身体を使って五感をフルに使った方が、その先アスリートになるのか、理科系や文科系、アーティストになるのかは分かりませんけど、その基礎にはなると思います。

リリーは、あまりお勉強型の幼稚園・保育園ではありませんけど、スポーツや身体を動かす環境を整えたリリーの森幼稚園と、アートやコーラス、絵画、リトミックに力を入れたリリー幼稚園の2つのカラーがあります。本当はどちらもやるのが理想ですけど、やっぱり五感をフルに使うっていうのがミソで。実際に体験をしていくというのが幼児期に大事ですね。10歳を超えると、リリーでは創造性教育やリーダーシップ教育に移っていきますから、まあ、そこが一つの分かれ目です。本当に相手を思いやって、このチームをまとめようっていう気持ちは10歳ぐらいから育っていくというか。

小浦先生

コーチの教育が僕、多いんですけど、例えば初心者がテニスをおぼえる時、耳から説明を聞いても絶対に覚えないっていうことですよ。一番初めは、テニスをするのを見て、こんな感じかなって、知識なんか使おうと思っても使えない。だから子どもっていうのは、一番初めは自分の知恵を使ってやるんです。それで、なんとかできるようになった時に裏付けの知恵を知ると、次の新しい知恵が生まれてくる。

だから、今、大久保理事長がいわれたように、体験というのは、初期の知恵を育む場ですよね。それがだんだん言葉を学び、目や耳から入ってきた情報で自分のイメージをまとめて、「今度こうしよう」、というように持っていくのが次の知恵じゃないですか。自分がやっていたことが合っていたのか確認して、次はこうしよう、ああしようと、そんな感覚じゃないかなって思うんです。

大久保

リリーの幼稚園では、3歳くらいになると走る喜びとかスポーツゲームをやったりします。簡単なゲームで、1つのボールを追いかけて、ドッカンドッカンみんなで駆け回る。フォーメーションなんてできませんから、みんな団子になって1つのボールを追いかけまわすわけです。こういう時期を経て、年長さんにぐらいなると、「お前は俺の前な。俺はこっちに行くから」みたいな協力がはじまって、ひとりでにフォーメーションができ上ってくる。その時期に、小浦先生がおっしゃった「こういうのがいいんじゃない?」、「こういうことをやろう」といった知恵が入ってくる。初めからフォーメーションを教えることはできるけど、それではダメなんですよね。最初にドッカンドッカン駆け回っている経験があるからこそ、フォーメーションが生きてくるわけで。初めから教えることが、逆に発達を阻害するというのと同じですね。

日本のスポーツ教育は発達発育過程がわかっているのに何も実践されていないように思います。子どもたちの知恵を育むために、五感を刺激する様々な体験が欠かせません。その手助けができる先生が、これから求められてきます。

子どもたちを理解したコーチングの必要性

小浦先生

実際、キッズテニスがあるじゃないですか。子ども用のやつ。あれは私がイギリス人コーチと一緒に1986年か1987年につくったんですけども。そんな関係で伊達公子なんかがやったりしてて、全国で開催していまして。そこには一番下で4、5歳くらいの子どもが参加するんです。4、5歳は全体の20%くらいですね。6歳くらいになると手はかからなくなってくるんですけど、5歳までは一番面倒を見なければいけない。いくらテニスの熟練したコーチでもだめで、ここはもう一番のベテランを置かないとどうしようもないわけですよ。

まあ、2時間のイベントで必ず泣いている子がいるわ、勝手なことしている子がいるわで、もうとんでもないことになるわけです。泣いている子の親御さんなんかは、「どうすればいいんですか」なんていうけど、「ほっとけ、タッチするな、見とけ」っていって、実際ほっておくんです。それで、こっちで勝手にやり始めるんですよ。すると、こっちがブワァーっと湧いてくるじゃないですか。20分くらいしたら、泣いてる子は誰もいなくなって、みんなレッスンに入っているんですよ。

「泣いている子にかまってたら、こっちの子がやる気がなくなってしまうから、目の前にいるやる気のある子を引っ張ればなんとかなる。それが引っ張れなかったら、お前らコーチとしてアウトだぞ」っていうぐらいの話しをするんです。

それが終わると、会場に来ている幼稚園や小学校の先生から質問が来るわけです。「学校であの子はこんなに動く子じゃない」って、「なんでこんなにうまく教えられるんですか」って。で、僕が「体育の時間に10人くらいのチームに分かれて、ボール1個で投げ合ったりしてない?」って聞くと、「してます」と。「そしたら、3人でしょ、やってるのは。残りの7人は私は関係ないってその辺をウロウロしてるんじゃない?」って聞くと、「そうです」と。テニスでいったら、10人で1個のボールを共有するなんてことは絶対にない。自分のラケットを持って、自分の方に飛んできたボールは打たないと。「絶対、お前、取れよ!」っていったら、動いていない子でも勝手についてくるんですよ。そういっておいて、ノコノコ歩いてくるんだけど、ポーンと打ったらスポンジのボールが頭にポーンと当たるわけです。それを、「はい、次―!」っていってどんどんやっているうちに、だんだんラケットで追いかけてくるようになる。そこまで辛抱しないといけないわけです。向こうがくるまで。

だから、コーチの忍耐が大事だと。先生は子どもが10人いたらボールを10個だしたらいいってことです。全員遊ばせといて、最後に一つにもっていくやり方があるんじゃないですかと。文科省の通達のままやってたら、そんなのできませんよと。

大久保

そうなんですよね。まず、そこから入っちゃうんですよね、体育の授業っていうのは。

小浦先生

テニスなんていうのは凄い個人スポーツなんです。個人スポーツだから総合的な練習を全部しないとダメ。でも、サッカーみたいな団体スポーツは、オフェンスはオフェンス、ディフェンスはディフェンスなどのパート練習をしておいて、バーンとマッチ練習をやる。学校でマニュアル通りにやったら、子どもは絶対に動きませんよ。45分間の授業なら、15分か20分は徹底的に個人的にボールで遊ばせて、ここに来たらゲームやろう!っていうやり方があるんじゃないかな?

大久保

さっきのサッカーじゃないですけど、団子になってボールを追いかけている原始的な段階を十分に経ないと、フォーメーションの必要性とか楽しさが分かってこない。幼稚園もリーグがあって、石岡のある幼稚園はコーチが子どもに指示をだすんです。「お前はこの範囲だぞ、ゴールの前から動いちゃダメ」みたいな。それで、強いんです。茨城の1、2なんです。でも、その先が伸びないっていうのを、よく耳にします。子どもたちが自分たちで考えないでコーチのいうとおりだから。うちはコテンパンに負けちゃうんだけど。

リリーにもサッカークラブがあって、この間、U-12チームがJクラブも出場する大会に参加しました。他のチームはレイソルズとかグランパスの子どもたちでしたが、うちはただのリリースポーツクラブ。そしたらベスト4。前からそうなんですけど、リリーはコーチがあまり怒鳴ってないと。それで、子どもたちが集まって、みんなでああでもない、こうでもないって議論していて、コーチはそれを聞いている。そういうタイプです。それがすごくいいですねっていわれましたね。

小浦先生

それが大事ですよね。試合前は、コーチは結構いってると思うんですよ。でも試合になったら子どもたちが自分でやる。僕もそうなんですけど、コーチの手助けで開発できるのは半分くらい。やり方だけ教えたら、あとはそれを高めていくのは自分がやらないと、できっこない。

大久保

自分で学び続ける力を身につけさせることが、リリーの教育の目的なんですよ。最終的に、それが財産になると思うんです。

リリーは附属スポーツクラブなどのスポーツ現場とも連携していて、大きな強みです。子どもたちへのコーチングを身近で体験できる環境が、スポーツ保育士としての実践力につながります。

子どもたちの能力を引き出すためのモチベーションの高め方

小浦先生

例えば、1週間のメンタルキャンプでも、子どもたちにメンタルって何だ、集中力や精神力って何だと聞くわけです。すると、人によって違いがあって、感覚的なものでわからない、説明できない。で、集中っていうのは、簡単にいったら自分の意識がどこにあるかってことだと。脳は1つのことしか処理できないから。それで、メンタルカードをやって、頭の中の残像を消さないように意識を集中するトレーニングをする。1点に集中して、残像を10秒、20秒、30秒とキープする。その長さが集中力だと。

次にスメダナのモルダウやベートーヴェンの運命、鬼太鼓やじょんがら三味線を聴かせて、曲のイメージから試合に入る前のストーリーをつくらせる。「試合に入る前にウォームアップをして、よーいスタート!っていったら、ゆっくりスタートするのか、強烈にスタートするのか、どっちだ?」っていったら、「強烈にだ」と。その強烈さ、鬼太鼓で聴いた強烈さを、ウォームアップでだせるか聞くと、「え?」っていう。ウォームアップでだせなかったら、試合では絶対にでない。身体と心の準備ができてなかったら絶対にスタートできない。心拍数180ぐらいまで追い込むトレーニングをしろと。ウォームアップの時に心のタクトを振れない奴はダメだって。そういう座学をする。

そして、昼からコーチを7、8人つけて練習したんですけど、子どもたちは驚くほどのモチベーションでトレーニングをするわけですよ。でも、僕はまだ足らんぞと。お前たち、鬼太鼓やじょんがら三味線のとおり強烈にいったのか?もう一回やり直そうっていうと、やるんですよ。で、すごい真剣にウォームアップ20分の試合15分をやる。コーチが、「どう?お前ら」って聞くと、練習なのにこんなに真剣にマッチできるなんてすごい!と。

それで、最後に5対4でマッチポイント取ってたのに負けた経験がいっぱいあるだろうと聞くと、みんなあると。「お前の相手は、あっさり諦めてくれる奴なのか?海の潮でいったら小さい潮、中ぐらいの潮、大潮とあって、小さい潮だったら、お前ら乗り切れるよな?中ぐらいだったらちょっとガチンコになるよな?でも、もし大潮が来たら、2mくらいの水が向かってくる。こんな相手だったらどうするんだ?」って。今日はこれだっていったら、やっぱりやるんですよ。

結局1週間のうち、最後の2日はコーチ全員が何もいうことなかったんです。みんな真剣にやってるから、本当の弱点が見えてくる。なんで僕がここまで要求するかっていったら、練習でいい加減にやってる奴に教えられないって。自分たちが真剣にやったら、お前のコーチは全部弱点をノートに書いてるだろって。そういうやりとりが、これからの選手には大事なんだ。そういうメンタルトレーニングを伊達や浅越はやってたんです。もう自分なりに考えてやれと。目と聴覚を刺激してイメージさせるっていうのが、かなり大脳に響くんじゃないかな。

大久保

そうでしょうね。子どもたちのモチベーションを引き出すのは、興味関心ですよね。保育では「導入」でモチベーションを高めて、主活動があって、最後にまとめに入っていく。保育ではすごく最初の導入が強くて、興味関心が高まれば活動も盛り上がります。子どもにリンゴを描けっていったって、描かないわけです。本人が持ってきて、実際に匂いをかいだり、触ったり、食べたりして、イメージをしっかりつかませてから、描いてごらんっていうと、かなりいい絵が描けるんですよ。先生が図鑑を見せて、これがリンゴです、みたいなのでは五感が刺激されないんです。

リリーの先生方は子どもたちのやる気を引き出すノウハウを持っています。その教育理論を取り入れたスポーツ指導コースは、子どものスポーツ教育の新たなモデルになるのではないでしょうか。

高度な知識・技術に「感性」をプラスできる人がプロフェッショナルになれる

小浦先生

伊達公子とは14歳ぐらいの時からの付き合いですけど、九州の遠征試合に行くとき、スクールの子全員連れて行くんです。試合は勝っても負けてもどうてもよくて、近くの太宰府に寄ることが目的で。彼女らは大宰府を知らないから、なんで修学旅行がいっぱい来るんですかって聞いてくるんです。それで、中に入ったら“学問の神様”って書いてあって、「それで!」って。あそこは池が“心”っていう字になってますよね。そういうのを見せに行くだけでいいんですよ。帰りに高校受験する子たちはみんなお札を買って、しかも一番高い2000円のお札。やっぱり500円だったら効き目ないだろって、それでいいんですよ。その2000円でいくつかのことが入っているじゃないですか。帰ったら池の字だけ忘れるなよっていったんですけど、練習の時に「あれは今日からの練習のために連れて行ったんだから、心してテニスしろよ」っていうと、それでやってくれるんです。

また別に、伊達ともう1人の女の子を連れて、京都の美術館で伊藤若冲の絵を見に行ったんですけど、黒い柿の木と日本画が飾ってあって、晩秋の柿で、ものすごく熟した果実が1個だけついていて。それを伊達が見て、「私は似合うけど、あんたは似合わない」っていうわけです。他のを見ても「やっぱり、あっちもダメだなー、私だなー」っていう。なんの話をしているのか分かる?その時、伊達には負けたと思った。なにかっていったら、「真っ黒なドレスに、柿色のマフラーつけて、私は着れる」っていうんです。ナスの絵を見て「ナスの色のワンピースを着て、グリーンのマフラーをしてても私似合いますよね?」って。「どっちかっていったら、私、ドレッシー型ですよね?」って、こういうわけですよ。で、もう1人の子はジーパンタイプだと。こんなこと教えに来たんじゃないんだけれど、こいつがここまで物事を発展して考える、すごいなと思って。それ以来、脱帽しました。伊達が17歳くらいだったかな。

大久保

つまり、感性が豊かになるっていうことは、課題意識が旺盛っていうことです。だから、音楽とか一流の芸術に触れさせることは感性が高まり、そして、課題を見つける力を高める。

小浦先生

だから伊達は、絵画とか陶器とか、芸術を見に行くわけ。でも、浅越っていう子はそういうのが全然なくて、もう完全に感覚的な右脳派。長嶋茂雄みたいな。それがスランプになったんです。50位くらいから一気に180位くらいまで転落して、13週間1勝もできなかったんですよ。その時にどうしようかと思ってやったのは、一切テニスをやらせない。それで、どうやったらこいつの感性を刺激できるかなって思ったら、“音”だったんです。クラシックじゃなくてミュージカル。当時、美女と野獣をみに行ってから、なんとなく遊びができてきて。車のハンドルみたいな遊び。今までなかったんですよ。ガーン、ガーンガーンって。その遊びができて、一気に一年間で21位。色々な所に旅しに行ったら、例えば水戸に来たら弘道館とか、偕楽園に行ってちょっと歴史に触れて帰ってくる。そういうのをしょっちゅうやってました。自分の目で見て、自分なりに感じたらいいんだと。

ワンオール、ツーオール、スリーオールぐらいまでは一緒。ここまではライバル同士で来るんだけど、感性の違う奴はこの最後ででていく。同じボールが飛んできても、勝負がかかると打てなくなる選手がいるんですよ。で、最初は悩んだわけ、僕が。だけど、これがメンタルや感性の違い。あそこで人が思いもしないようなところに打つ、ミスしたってかまわない。子どもの頃にそういうミスをしてきた奴は、練習したら入るんですよ。これは、いろんなスポーツでもいえるんですよね。

子どもの感性を育てる教育。これを最も大切にするリリー教育に共感します。「スポーツ理論×感性」で子どもたちを指導するスポーツ保育士の今後に、大いに期待しています。

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